浅井さやか　One on One

「闇を覗こうとする時　闇もまた君を見ている」

「昼は夢　夜ぞうつつ」

「現世（うつしよ）は夢　夜の夢こそまこと」

江戸川乱歩における「DARK」とは―？

という果てのない問いを、なんとも濃密に感じられるとても贅沢な時間でした。

緻密に計算された言葉のパズルが瞬く間に埋まっていき象られていく過程は、恐ろしいくせに目が離せない。

人の不幸という名の闇を覗き見るこの感覚は、確かにどろどろと甘い…蜜の味がする。

「白昼夢」も「人間椅子」も「赤い部屋」も書物として読んだことはありましたが、読み手が変わる度に全然違う顔を見せるのが何とも不思議で、視聴したのは自宅の一室だったのにも関わらず、古びた埃っぽい図書館の窓際の席で、ひっそりと《読んでいる》という錯覚に陥ることができました。

【濃厚で贅沢な三密】を、ありがとうございました。

糸井幸之介　FUKAIPRODUCE羽衣

美声にうっとりしているうちに、乱歩の世界に迷い込み、演者の呼吸に巻き込まれて、あっと一緒に息を呑む。

ノーカットの緊張感と人の声が持つ本質的な艶が、乱歩の物語のドラマチックさや淫靡さと相性良く響き合って、

まさに白昼に夢をみるように、どっぷりと別世界へ浸らせてくれます。

大原薫　演劇ライター

部屋の明かりを消して、『RAMPO in the DARK』を観た。平野良・藤原祐規・折井あゆみのE組、大須賀純・山本和臣・石川由依のG組である。

江戸川乱歩の『白昼夢』『人間椅子』『赤い部屋』を、それぞれが一人語りで物語を紡ぐ。冒頭から伝わる、ひんやりした空気感。はじめは静かに、冷静に……、やがてキャラクターの欲望と狂気がひたひたと近づき、気づけば一気に乱歩の世界にからめ取られる。観終わった後、明かりをつけた部屋は幻惑から解き放たれた不思議な余韻に満ちていた。

日常をくるりとひっくり返す「物語」の世界に耽溺できるのは、自宅で「観劇」する配信ならではの醍醐味だ。

ましてや、『RAMPO in the DARK』は劇場での無観客上演で、一発撮りされたもの。撮り直しが利かない、一度限りの緊張感が画面からあふれる。

大正末の耽美でクラシカルな時代感覚を大切にしながら描いた世界は、演者によってまったく違った色彩を帯びる。些細な目の動きや吐息まで繊細に映し出す映像・音声で、演者の迫真の演技に心揺さぶられる。言葉の繊細なニュアンスまでも表現し尽くす声優、抑制された動きや表情の中に思いが立ち上がる俳優と、アプローチの違いも興味深い。出演キャスト全19名９組。繰り返し観て、あの「恐怖」に何度でも浸りたい……。

加納幸和　花組芝居

コロナ禍の中、ネット上で演劇人達の様々な試みが行われている。幾つか拝見する機会があった。

リモートによる読み合せの生中継や、ほぼ映像作品のような、凝った編集を施したものもあった。

そんな中、配役のバージョンを変え、乱歩の名作を正攻法に撮影したリーディング企画。

作品に相応しい、大人の感性に満ちた演出が何より大好感である。

RAMPO-Bを見たのだが、配役のバランスも嫌味がなく、自宅の机で実にリラックスして鑑賞出来た。

鳥越裕貴　俳優

同じ作品を皆さん演っているのですが

役者さんの組み合わせによって

こんなにも違うのかと正直驚きました。

劇場で観たかった気持ちはありますが部屋を暗くするだけでこの作品の世界観に引き込まれます。

堀越涼　あやめ十八番

乱歩の言葉は暗く美しく、重くて鋭い。現代に生きる我々が普段決して耳にすることの無い、怪しく光る珠玉の台詞が、そこかしこに仕掛けられている。この動画を見る多くの人は、ＰＣかスマートフォンを利用すると思われるが、そういう身近なものから大正の作家の台詞を聞くというのは、実に刺激的な体験だ。テレビとは一味違う舞台特有の表現の数々は乱歩の世界と相性が良く、冒頭からすぐに物語にのめり込むことが出来るだろう。

拝見したのは、平野良・藤原祐規・折井あゆみ組。古典作品は役者の力量で出来が大きく左右されるが、その点、今回の出演陣は申し分ない。過不足なく、物語に没入するための大きな手助けとなり、三者三様の彩りを加えてくれる。

動画配信という試みであるから、先ずは気軽に再生してみるというのが宜しかろうと思う。乱歩の台詞に呑み込まれれば、もうそこからは動けない。視聴者自身が、人間椅子に囚われてしまったかのように。

丸尾丸一郎　劇団鹿殺し

世にも恐ろしいコロナウイルスが蔓延する中、江戸川乱歩を観たい人間が果たしているのだろうか？

と動画を見始めたが、いつの間にか役者たちの声に聞き入ってしまった。ああ、劇場が懐かしい。劇場に早く行きたい。

僕は未だに部屋に篭もって悶々としているが、動画の中の役者たちは闘っている。少しでも演劇が忘れられないように抗っている。

そんな声に、僕は聞き入ってしまったのだろう。

劇場の匂いを僕に思い出させてくれたカンパニーに、精一杯の拍手を送りたい。

※五十音順